日本のアニメ―時代を象徴するもの―
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『鬼滅の刃』

【公開31日間の興行成績】
  • 10月16日(金)~11月15日(日)31日間成績
  • 全国413館(IMAXシアター 38館含む)
  • 観客動員:1750万5285人
  • 興行収入:233億4929万1050円
劣化し続ける日本の中で、唯一踏ん張っているのが日本のアニメかも知れない。

今一番の人気アニメ『鬼滅の刃』の興行成績が、このコロナ禍の中、観客動員1750万人を越したという。何かがヒットするということは、そこに「何か」を象徴するものがあり、そのことが一つの時代を示すバロメーターでもある。僕らの時代のアニメで言えば『鉄腕アトム』であり、『あしたのジョー』だった。

残念ながら、当時の少女漫画というジャンルは不勉強で殆ど記憶にない(『小さな恋のものがたり』くらいか)。そもそも「少女」漫画と呼ぶこと自体一つの差別なのだが、嘗ては、文学界でも女流作家とか普通に呼んでいた。時代は大きく変わって、今では男性の作家を凌ぐ優れた女性作家のアニメ作品も多く出ている。今回紹介する『鬼滅の刃』も作者は女性だ。
 

  そう、小1から大学までの16年間サッカーを続けていた次男が、春休みだったか帰宅して居間のソファーで休んでいた時のこと.....

僕は、ぼんやりTVを観ていたのだが、後ろのソファーで激しくティッシュで鼻をかむ音がするので振り返ると....184㎝もあろう大男が、こともあろうに「少女漫画」を読みながら大泣きしている。。「えっ」っていう顔をしたら「少女漫画をみて泣いちゃいけないって誰が決めたんだよ!チ~~ン;;」。「とうちゃん、今の少女漫画を舐めたらアカンぞ!クスン、チ~~ン;;」って泣きながら突っ込まれた。

その後、僕は息子の部屋の本棚に詰まった次男御用達の「少女漫画」を真面目に読むようになった。
 
   
  「少女」という切り口でみると、アニメはもちろん大河ドラマや朝の連ドラも女性が主人公になって久しい(僕はTVを観ないので最近の流れは分からないが.....)。宮崎駿の作品の主人公は、『風の谷のナウシカ』から始まって『千と千尋の神隠し』等、大方少女が主人公になっている。そして、僕が過去に凄い!と思ったアニメ版『時をかける少女』も、主人公は少女になる。これって、何を意味するのだろう......。
 
   
  12月14日
こうコロナが酷くなってきて、医療崩壊も起きている中で、アニメについて語っている場合か... という突っ込みを自分でもしたくなる状況ですが、ここはコロナと絡めて進めて行ければと思います。。


80年代「ジャパンアズナンバーワン」と欧米先進国から称賛を浴びていた頃、宮崎駿原作の『風の谷のナウシカ』は生まれている。そして、数年を経て埼玉県所沢市を舞台とする『となりのトトロ』がつづく。実は、これに先立つこと数年前に鳥山明原作の「Dr.スランプ アラレちゃん」が生まれていた。

これらのアニメに共通するコンセプトは......「暴力を無化すること」。
 
 











 
  『一姫二太郎』― 外国にも『幸運の者は初生児に娘を授かる ― The lucky man has a daughter for his first born 』という諺があるそうだ。

その意味は、未熟で若いお母さんが、最初に子供を授かるとしたら、母子分離不安が強く、基礎体力・抵抗力・免疫力の弱い男の子ではなく、言葉も早く心身とも安定して生まれる女の子を先ず育て、ある程度のスキルを付けた後に、難しい男の子を育てるのが理想ということ。
 そういえば、美輪明宏さんが言っていた「今まで生きて来て『強い男』と『弱い女』に会ったことがない」と......(納得)

80年代、感性が鋭く世の中の矛盾と限界に気が付いていたクリエイターは、一家庭だけの問題ではなく、社会全体、世界全体が無意識のレベルで「女性的なるもの」の重要性を深く認識していたのではないだろうか。
 
 




 
  今回、空前絶後のダメージを世界中にもたらし続けているCOVID-19に対して、冷静でかつ強いリーダーシップをもって迅速に対応し成功した首長は、ドイツのメルケルを始めアイスランド、台湾、ニュージーランド、フィンランド、デンマークと全て女性になる。中でも、世界で最も早期かつ迅速に対応を始めたリーダーの一人が、台湾の蔡英文総統だ。  
     
  大仰に言って、僕らは「今」、300年前にイギリスで始まった「近代化=産業化≒資本主義化」が、まさにコロナの後押しもあって急速に終焉を迎えようとしている現場に立っている。

近代化とは、戦争の世紀でもあり、ヒトラーを生み、最終兵器の原爆も産み落としたところで世界大戦は、いま停戦状態でフリーズしている。これらを牽引してきたのが「男」。本当はこの世界、数十年前に既に「つんで」いた。でも、この強固なシステムの中で、男は降りたくても降りられない...。

確か卒業文集で「誰かこの地球を止めてくれ!俺は降りたい...」と記したのはY君。そして、それが今。

.... つづく 
 
     
  12月28日

年も押し迫ってくると、あれもこれもやらなければならないことが山積し、聖徳太子の様な毎日を送っています。更新も遅れがちになり申し訳ない(fwu~;;)。

そう、そんなこんなしていたら『鬼滅の刃』、興行成績が何と約3億9000万円を記録。累計では動員2317万人、興行収入311億円を突破した。邦画、洋画を合わせた歴代興行収入ランキング第2位の記録で、第1位「千と千尋の神隠し」(2001年)の約316億8000万円に迫っている。(MANTANWEB より) 

このコロナ禍のなかで、この成績ということは驚嘆するし、そこには深い意味が隠されているとみるしかない。
 このアニメのストーリーは、ざっくり言うと「人間と鬼との闘い」になる。言い換えると「善と悪」、「利己性と利他性」と言ってもいい。
 
     
  『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だけを映画館で観ても、余りよく内容に迫れないと 思う。(以下↓、TV放映された25編を無料で観ることができます)。



…というのも、僕らの世代が共通して持つサクセスストーリーとは異質というか、位相が違うと思えるから。主人公の竃門炭治郎は滅茶弱いし、成長も遅々としている。その点、ひとつ前の世代になる『ドラゴンボール』とも大きく違っている。そして、『ターミネーター Ⅱ』の様に、主役は死ぬ。

そして、いま世界は猛威と変異を繰り返し日々バージョンアップしている COVID-19 の活動期の中にあるということ。まっ、ベタに言うと「鬼」≒ 「新型コロナウィルス」という見立てにどうしてもなる。
 
   
伎楽面
 
折口信夫『鬼の話』は短く分かり易い論文です。青空文庫で無料で読めますので、このお正月にお薦めです。  そもそも「鬼」とは何かという基本に還ると、ここはもう柳田國男 の民俗学を先ずは繙きたくなる。柳田國男 「妖怪談義」によると「鬼(おに)」は「穏(おぬ)=かくれしもの」(居ない)から来ているということ。つまり普段(日常)には「居ない」が、非常時に現れる事態の化身ということになる。

柳田の弟子にあたる折口信夫は、さらに深め「鬼」とは「まれびと」(異世界[他界]から非日常にやって来る祖先=死者=神=自然という解釈になる。

鬼と神が重なるという物語は、そう奇異なものではなく、例えば大黒様にしろ恵比寿様にしろ、元は反社会的なならず者。嵐を呼んで人びとに災害をもたらしていた餓鬼であった。それが、反転して回心し神になるという物語。
 
   
COVID-19
 
  今、アメリカの1日当たりの新型コロナウイルスの感染による死者数は3100人を超えているという。 このウィルスと人間の理想的なシナリオは、ウィルスとの闘いに勝利して彼らを撲滅することではなく、ちょうどミトコンドリアの様に、人体の細胞の中に入って共生関係を構築すること。つまり、お互い相手を殺し合わず、何の害もないどうでも良い関係を造れれば、それが自然な平衡関係になりウィンウィンの生存戦略だ。

そもそもウィルスは、人間様よりはるかに賢いし、僕ら哺乳類が誕生するはるか昔からこの地球上に住んでいた先住民。

さて、話を、ここから「鬼滅の刃」→「鬼」→「鬼籍」→「神」→「自然」という流れに落とし込みたいのですが。。Gya Oh !! お茶をひっくり返してPCがお陀仏に。。💦-----

つづく
 
     
     
   2021年1月4日
新年明けましておめでとうございます。

暮、正月と聖徳太子状態が続いていますので、columnも年を跨いでしまいましたが、本年も宜しくお願い致します(PCは2台とも不安定のままでありますが続けます;;)

さて、ご存じのように『鬼滅の刃』、ついに興行成績歴代第一位となりました。

因みに、登場人物のキャラの内、最も人気があるのは......。
 
   
我妻善逸
 
   我妻善逸になります。

善逸のキャラですが、主人公炭治郎と同期の鬼殺隊士であるにもかかわらず、普段は無茶苦茶臆病で、鬼が出ると先ず逃げ出します(-_-;)。おまけに泣き虫で、直ぐに弱音を吐き現実逃避も甚だしいのですが、一度覚悟を決めると豹変し、身を投げうってことにあたる.....という設定です。こういったヒーローが新しい時代に沿った人物像と言っていいと思います。

実際の僕らは、まさしく善逸の様に、途轍もなく難しい事態を前にして出来れば逃げ出したい....そう思う方が正直ですし、実際です。こういった態度は、建前としては「女々しい」ということになります。
 この「女々しい」という表現は、男文化のなかで生みだされた”女々しい”男の姑息な知恵です。世界最古の小説「源氏物語」の時代は、女性は漢字を使うことは許されてはおらず「女手」と書いて「ひらがな」のみを使うことが強いられていました(誰よりも才能があるのにです)。もちろん、才ある女性は、漢文などすらすら読めていました。
 
     
   女性を蔑む言葉は、「女々しい」のみではなく、「嫉妬」、「嫌味」、「妄想」、「妖怪」、「妥協」、「姦淫」etc もう枚挙に暇がありません。まっ、現実のネガですね(どれだけ男が自信がなかったかのバロメーターにもなり書いていて恥ずかしい;;)

ところで、古代日本では、天照大神が君臨し国を治めていました。「治める」の意味は、今と違って政治を意味しません。そういった、世俗の政は弟に任せ、もっと上位にある「まつりごと」=祀る、つまり神と交信し、人の生き死と未来を占うことを司どっていました。その担い手は、女である天照大神だった訳です。所謂母系社会ですね。

そして今、僕らの世界は、10,000年前の母系制に回帰し始めていると言っていいと思います。何故って、政治も、経済も、まったく未来を予測できなくなっていますし、トランプ、安倍をみても男の政治はクソですし、経済もバブルの連続で黒田バズーカを撃ちっぱなしのこの体たらくです。
 
   
禰豆子
 
  「敏感な男は、女にある種の恐怖心を持っている」....そう言ったのは、かの文芸評論家小林秀雄です。未だ無名の詩人中原中也を最初に評価し、後に中原の恋人長谷川泰子と血みどろの三角関係になった文人です。

話は逸れますが、僕の鎌倉彫修業時代、毎朝小林秀雄に会っていました。といっても、こちらは朝のジョギングのクールダウン、あちらは朝の散歩でした。鶴岡八幡宮境内で無茶早歩きの爺さんとすれ違っていたのですが、これが小林秀雄。無茶格好いい爺さんで、こりゃ中也も負けるなと。。おまけに、好青年だった?僕は、小林が吾工房の株主だったこともあり、 入門した博古堂社長直々の命で、注文品の納品にご自宅にお邪魔したことがあります(これ自慢です。こじんまりとした佇まいですが、無垢の総檜造で品格のある邸でした。
 
     
  そう「鬼滅の刃」でした。もうお分かりの様に、コロナ禍もあって僕らの未来は全く見通せません。そして、COVID-19は、変異を繰り返し7倍の感染力になって迫ってきています。日本人が下位にみている(大きな誤解)お隣中国では、1日1000万件のPCR検査が可能なのに、吾日本は精々2万件件足らずです。その訳は、詳しく触れません(PCR検査を一手に請け負っている各地域の保健所が、厚生労働省の医系技官の天下り先になっているためとだけ言っておきます)。 

こういった現実を、若い世代は諦観の境地で受け入れているでしょうし、この先に待つ絶望も受け入れています。こういう態度を受動的能動性というそうです。どんなに辛く悲しい現実が待っていても、『時をかける少女』や『君の名は』のように、起きてしまった不幸な過去をタイムスリップし過去に遡って書き換えようとはしない....たとえ死が待っていようと、その現実を受け入れ「仲間=愛」のために命を投げ打つ....そこが新しいアニメヒーローの逞しさであり「女性的強さ」としての売りです。

表向き弱く女々しくあっても絶対に諦めず、鬼になってしまった妹をも救おうとする姿勢に時代が呼応している。何故って「鬼」は人間そのものだから。それが、人気の秘密だと思います。
 
     
  そして、主人公竈門 炭治郎(かまど たんじろう)は並外れた嗅覚を持っているところが最大の強みであるところも、コロナ禍を象徴する点です(コロナに罹った証は臭覚が無くなること)

長くなりました。

10000年の澱が溜まり、膠着、閉塞した今を変えるのは、僕らがCOVID-19以上に変異をし、バージョンアップを繰り返さなければならないことを、昨年コロナが教えてくれました。それ故、コロナは「鬼」であると同時に「神」であり、人間でもあります。 そして、そのエネルギーの源が、人と人とのコミュニケーションだということ。それが『鬼滅の刃』のもつ今日的意味になります。

正月早々あれもこれもで、ちと疲れました;;

でも、竈門 炭治郎(かまど たんじろう)、禰豆子の様に、僕らも健気に、前向きに生きて行けたらと願っています。

「社会が劣化すると、人は輝く」(小室直樹).......

本年も、okuzumi-class.net よろしく~ (fwu~””)
 
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